概要

湯浅物産館は、明治30年(1897)湯浅新三郎によって貝細工の製造加工・卸売りの店舗として創業しました。建物は昭和11年(1936)に建てられ、鎌倉における代表的な「看板建築」として、国の登録有形文化財(建造物)および鎌倉市の景観重要建築物等に指定されています。1階奥のカフェ久時(ひさき)は、湯浅物産館の直営店です。

土産物店から複合商業施設へ

創業者の湯浅新三郎は、鎌倉の土産物として、貝殻を美しく加工した置物などを考案して製造・販売を開始。観光客はもとより、全国の海の近くの土産物店にも卸し、商いを広げました。

その後も4代にわたって土産物店を続けてきましたが、平成26年(2014)に耐震補強とリノベーションを行い、複合商業施設として生まれ変わりました。

建物について

関東大震災の被害を目の当たりにした湯浅新三郎は「地震に強い建物を」と、大工を伴って横浜まで通い、震災に耐えた建築物を研究しました。それから10年以上かけて、昭和11年(1936)に貿易商社の建物を手本にして建てられたのがこの湯浅物産館です。

木造の和風建物の正面を平らに造り、洋風の装飾を施した建築様式を「看板建築」 といい、この建物は規模・質ともに鎌倉における代表格です。平成15年(2003)には、鎌倉市の景観重要建築物等に指定、令和3年(2021)には国の登録有形文化財(建造物)に登録されました。

正面の外壁は青緑のスクラッチタイル貼り、通りに面した1階は大きな窓を持つ木製の引き戸、2階部分には半円形の装飾を備えた6連の上げ下げ窓が並んでいます。

看板は木製の文字で「物産貝細工製造卸湯浅商店」と右から左に並んでいます。当初は金箔貼りでしたが、戦後に改修して銀に変わりました。

店内中央部分は吹き抜けになっており、天窓から直接光が差し込みます。2階では吹き抜け部分をガラス戸が囲み、板張りの回廊が巡っています。

1階奥のカフェでは、色付き模様ガラスや天井の丸太梁などを、当時そのままの姿で見ることができます。カフェから出られる中庭には、昭和初期に段葛で使われていた木製の灯籠(おそらく最後の1台)が残されています。

平成26年(2014)に大規模な改修工事を行い、建築当初の雰囲気を残したまま耐震補強が行われ、外壁や看板、内装もきれいに修復されました。地元の清興建設が施工した工事は、日本建築防災協会の「耐震改修優秀建築・貢献者表彰」を受けています。

下記のレポートは担当した建築家・菅原浩太氏によるもので、建物の見どころを写真と共に解説しています。

文化財指定・登録・受賞歴

ギャラリー